政治家と三つの輪

 選挙シリーズもいよいよ佳境に入ってきました。って、「一体いくら書くことがあるんじゃい!」という感じですが、この際すべてのノウハウお伝えします。

 ずいぶん前ですが、民社党(若い人知ってます?)の高名な理論家という方を紹介されて、ご自宅に通っていた時期があります。その時に教わったのが、「政治家には三つの輪がある」という話。

 つまり、「お前のことは嫌いだが、お前の政党は好きだから入れてやる」という人もいれば、「お前の政党は嫌いだが、お前のことが好きだから入れてやる」という人もいる。「お前もお前の政党も嫌いだが、お前の政策は好きだから入れてやる」という人もいます。

 政党・人・政策、この三つを使い分けて、どの人にはどれを強調すればいいのか、どの場ではどれを強調すればいいのかを選んで話す(説得する)ということです。

 野党系だとたいてい政党の支持が弱いので人物か政策になるのですが、新人の場合、政策があんまり分かってないので、党のパンフレットかキャッチコピーを連呼することになりがち(「政権交代!」「改革を止めるな!」等)。なかなか武器になりません。政策は横浜市長選のようにタイミングがあえば、政党が弱く本人も知名度がない場合でも一気に上がる要素になります。政党も弱く、政策もイマイチなら「人物」です。

 衆院選を戦う皆さん、時間はあまりあませんが、頑張ってください!!

政治と恋愛の関係

 恋愛(結婚)と選挙は似ている。道ですれ違った人に突然恋に落ちて「結婚しよう!」と思うことがないように、街頭演説しているのを見て「この人に投票しよう!」となることはあまりない。よっぱど、ルックスがいいとか、話がうまいとかでないかぎり。だから街宣で票を取るのは難しい。
 やはり信頼できる人が「この人、見栄えはちょっと悪いけどいい人だから見合いしてみない?」って連れてきた人なら「まぁ信頼して会ってみるか」→「まぁいいか」となる可能性は高い。選挙でいうと「紹介」してもらうのがこれに当たる。だから、街頭などの空中戦ばかりでなく、紹介してもらうのが確実だ。できればできるだけ名望のある人、地域で信頼されている人の紹介なら言うこと無し。これが時間かかるので、密度は薄いが、ミニ座談会とかになる。
 その他、地域の集まりなどに顔を出して「なんとなく顔を見知っているけど、悪い人じゃなさそうねぇ」→「意外に優しい一面があるのねぇ」となれば、恋愛、いや投票してもらえる可能性は高くなる。だから小まめに地域を回っていることも大事。


 大体、年齢の高い世代がちゃんと選挙に行くのは、世間を経験して政治の大事さに気づいたこともあるだろうが、「投票日には選挙に行くもんだ」と教育を受けてきた影響が大きいのではないかな。これは「適齢期になったら結婚するもんだ」というその世代の考えと連動している?
 それが平成生まれとかになると「なんで結婚なんてしないといけないの」、「誰を選んでもたいして変わらないし、バラ色の未来なんてないんだから結婚しなくていいや」=「投票にいかない」となってくる。それを説得するのは結構難しい。「だって、そういうもんだから、そういうもんなんだよっ!」って。だから「投票率を上げよう!」という運動はなんだかレトロな感じがするのかな。


 政治の側(投票される側)はもう低投票率を前提として動くか、目の覚めるようなぴっかぴかの男または女になって、投票所に思わず行かせてしまうぐらいの魅力を出すか。


 人間には「現状維持バイアス」がある。不確実な未来よりも、確実な現在の方を選ぶ。現政権、現首長、現職がいくらDV夫みたいに、暴言は吐くわ、金は大半自分のものにして妻(国民・市民)には少ししか渡さなかろうが、不正をしようが、妻や子どもが病気になっても放っておこうが、なかなか別の男に…ってことにはならない。


 別の男がぴっかぴかならともかく「悪いことはしません」「暴言は吐きません」「不正もしません」みたいな「しませんリスト」だと、心は動きにくい。ましてやこの男、金持ってなさそうで「一緒に貧乏しよう」みたいなことを言い出しそうだと余計に…。


 昔、ある野党系の新人候補の応援に入って「あんまり『変える、変える』って言うな」とアドバイスしたことがある。「むしろ『変えません!』って言え」って。
 さすがに、「私が当選しても何も変わりません」とは言えないので、ものの喩えなんだけど。これも人の現状維持バイアス、変化に対する恐怖を考えてのこと。変化を促すには、不安を解消し安心してもらった上に、不安を越える「良いこと」があると納得してもらわないとダメだと思う。
(ちなみにこの方はその後も連続当選されています)

合格者オリエンテーション

gokukaku

 昨夜、政策担当秘書試験の今年の合格者の方のオリエンテーションがありました。


 例年のごとく、資格取得者で「政策担当秘書・族議員」自ら呼ぶ大西健介議員のご挨拶、事務局の説明の後、先輩合格者との懇談を行いました。なかなかわかりにくい仕事&仕組みで、情報もないなか、合格者の方も大変です。私たちも一生懸命伝えようとしていますが…。


 大西先生が令和3年2月26日予算委員会第一分科会での質疑で、政策担当秘書について質問されていて、合格者のケアとかに対して前向きの答弁を引き出しているので、既合格者の方も、これから受験の方も(少し)期待して待っていてくださいね!

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/hisho/index.html

選挙のスケジュール感

選挙における時間(期間)の感覚っていうのは、普通の感覚と違う点がある。ここは経験者に聞いた方が得策です。
 大体、バタバタと緊張の中で公示日を迎えて、その日は全力で活動する。選挙期間は(通常)衆議院選が火曜日から始まって次の次の日曜日までの12日間、参議院が17日間。いずれも土日を挟むのだけど、それが「スーパーサタデー&スーパーサンデー」で選挙期間の一番の山場。人の多いスーパーや行楽地や商店街に繰り出して、アピールをするチャンスとなる。
 本当はその前の金曜日から土曜日にかけて、報道各社の調査が入り、結果が日曜版か月曜版の紙面に出るので、金曜日までに有権者への浸透を図っておくべきだ。そして金・土に入れた情勢がひっくり返ることは…実はあんまり無い。
 普通は選挙が始まってからが「選挙」だと思うが、本当は「選挙期間の第一金曜日」までが選挙だと思った方がいいぐらいだ。
 選挙活動って「やまびこ」みたいなもので、有権者に届くまで時間がかかる。本人は「俺こんなにやってるのに」と思ってても、有権者に認知されるには相当の時間がかかる。選挙終わってから「あれ、出てたの?知ってたら入れたのに」とか言われることもまれではない。だからこの「時間差」も計算して活動するべきだと思う。
 別の時間感覚の話。選挙の本質を小説で書いた『当確師』だったか『選挙参謀』だったか忘れたけど、選挙本番までに(昔は)後援会で集会などのイベントを打っていくのが普通だった。そこで、「一つのイベントをやったら休憩期間を入れろ、後援会が疲労してしまうから」という記述があったが、これも選挙における時間の計り方の一つだ。
 さらに最近では、ネットでの選挙も重要になってきているので、「すくなくともこの時期には○○人ぐらいフォロワーが欲しい」とか(期待通りにはならないだろうけど)念頭に置いておくのも必要だ。普通、いきなり面白い文章はかけないから。
 以前、選挙の途中で(劣勢になった)候補者から、いきなりツイッターやりたいと相談を受けたことがありましたが…。無茶なことはやめてね。その時は、その方がツイッター向きではないキャラクターだと思ったのでやりませんでしたが、別の候補で選挙期間中に始めて一定の効果があった場合もあります。
 いずれにせよ、選挙には独特の時間感覚があるということを意識しておいてください。

選挙で勝つには

 選挙で何をやるかというと、まずその規模で違う。

 市町村会議員なら、最低当選ラインを見極めて、その2倍の得票を目標に活動する。1000票で当選なら2000票。雨が降っても槍が降っても投票に行ってくれる人を探し出す。意外と「おう、応援しているデ!」とか言っても投票に行ってくれなかったりするのだ。自分に置き換えたら分かりそうなものだが、雨が降ったらやめようかと思うし、レジャーの予定が入ったらやめようかと思うのが人情。自分が思っているほど、他の人は大事に考えてくれない。だから、必ず投票に行って自分に入れてくれる人を探し出す必要がある。

 これが有権者数40万、50万とかの衆院選とか都議会議員選とか、200万人の参議院選(選挙区)とかになると様子が変わってくる。ほとんどの有権者は候補者を実際に見ることもなく、手紙や電話でもなんら接触されることなく投票をすることになる。どんなに頑張って街頭活動をやっても、有権者の数%しか会えない。

 で、多くの人が考えるのがネット作戦。ネットについては別立てで書きますが、概して使い方が下手。まず写真が遠目で、何を狙って、何を伝えたいのか分からない。記事も、他人の記事の引用とか食事とか、たまにはいいけど、自分の個性とか主張が伝わる物を挟み込まないと面白くない。ま、これは長くなるので置いといて。

 じゃ、何をするのか。前にも書いたが、有権者が判断するときに一番利用しているが「選挙公報」。だからこれには注力する。

 次は、公示日のニュース。大体、一般の人の関心は、「選挙始まりました!」の初日、「いよいよ明日が投票日です!」の最終日に高くなる。初日のニュースは、どの候補でも平等に報道される。ここで、一番自分が言いたくてポイントになるところ、争点にすべきところを放送してもらうべきだ。放送局がどの部分を使うか分からないって?大丈夫。どう考えてもこのフレーズでしょ!というところがあるはず。なければ作るべきです。

 あとは選挙期間中に幸運にも放送してくれることがある「注目の選挙区」みたいな番組。候補同じ時間が配分される。私が入った選挙でもそれがあった。NHK7時のニュース特番。一体何人の人が見てくれるのかと思うと目もくらむ思い。チマチマと駅でビラを配っていることを思えば桁違い。これを最高の物にする必要がある。

 候補者の方がお医者さんだったのだが、幸運なことに事務所の入っているビルに使われていない診察室があった。ここで座談会してその様子を撮影してもらうようセットした。そしたら候補者本人さらりと白衣を着こなして入ってきました。もう誰が見ても、この候補者はどういう人で何を主張しているのかが明白。ちなみに、この方は最初ご自分で「絶望」とおっしゃっていたのですが、見事当選。もちろん何度も言っているようにこれだけの理由ではないですけどね

 自分で褒めたいのは(誰も褒めてくれないので)、この診察室パターンが万が一採用されない時の為に、予備で保育パターンも撮っていたこと。子どもを呼んでおもちゃも持ってきてもらった。ただ子どもの声が大きすぎて採用されなかったようだけど・・・。

 これと対照的に全く意味のないのが、選挙後に放送される「選挙振り返り番組」の取材。選挙期間中はいろいろ規制があるので、選挙後にワイドショーなどで使う映像のための取材が入ることがある。これはまったく投票と無関係、はっきり言って邪魔。

 私の関係した某選挙では、選挙戦の重要なところでこの取材のために相当の時間と労力を割いていた(そこではペーペーだったので意見できず)。結果、当初有力と言われていたこの候補者の方は落選しました。 と言うわけで、いろいろなメディアと上手く付き合って、有権者の方にリーチしてください!

横浜市長選

 横浜市長選、実に熱い戦いでした。今回も学べる点が沢山ありました。まったく選挙って、進化していて、奥も深くて、究めるのが不可能なところが魅力ですね。

 まず演説です。当選した山中さんは、多分陣営から「新人なので、まず顔と名前を売ること」と言われていたんだと思いますが、演説の途中に何度も「私、山中竹春は」と名前を挟むので結構聞きづらい。これよくある選挙のカン違いで「顔と名前を売る」のが重要なのは確かですが、文字通りにとらないほうがいいです。

 驚きだったのは田中康夫の演説。一人で50分ぐらいしゃべるのだけど、全然あきさせない。声を張り上げるわけでもないのだけど、知事をやっていたこともあり、話が具体的で分かりやすい。後半追い上げたわけが分かる。最終日の最後20時前にたまプラーザ駅前で観たのだけど、300~400人(あるいはもっと)の人が立ち止まって、身動きもせずに聞いている姿っていうのは、(世間ずれした私でも)身震いが来るような「この国の民主主義はまだ死んでいない!」と思うような印象的な光景でした。やっぱりまだ言論にも力はあるのだ。

 ある人が「応援弁士なんて面倒くさいだけで要らない」とどこかでおっしゃっていたのですが、ある意味なるほどと思いました。本人がしゃべれるなら応援弁士は不要ですね。

 あと福田峰之さんの演説も良かったらしいのですが、観られずに残念。福田さんはバーチャル選挙事務所を開設したりしていて「選挙はどこまでDX化できるか?」という点でも非常に興味深い選挙をされていたと思います。

 選挙公報の分析も面白いです。実は有権者の方が、投票先の判断に使っている最大の材料は「選挙公報」だというデータがあります。だのに何故か候補者の方はこれを軽視している。文字が多くなく、少なくなく読みやすく伝わるものを!これが最大の情報源なのだから、もっと注意と時間をかけてもいいはず。

 選挙ポスターについては、プロのカメラマンの方の記事があり、大変興味深く読ませていただきました。https://muto.photowork.jp/entry/yokohama_2021。 しかし小此木さんのポスターと林さんのポスターは、すごい昭和だった・・・。好きな人もいるかもしれませんが、これでは勝てないでしょう。

 SNSの使い方に関しては、Yoshimi Nakamuraさんの書かれた記事 https://note.com/snspoliticslab/n/n485306152a8b が参考になります(今回、俺手抜きだな)。

街宣カーとウグイス嬢の話

 で、街宣カーである。もう、選挙となるとすぐ「街宣カーをどうするのか」「ウグイスさんをどうするのか」を悩むのが通常である。選挙に関する相談もこれが多い。

 しかし、個人的な意見は「それほど悩まなくて良い」である。というか、今まで読んでもらっている方には分かってもらえると思うが、私の選挙に対する意見は、他の大半の人と違っているので、オルタナティブとして参考にしていただければと思います(自信持っているけど)。

 まず、街宣で票は取れない。街宣(車)を聞いて・見て投票先を変えるだろうか?答えは「否」。ただし、研究によると街宣(車)は「投票先を変える効果はないが、投票に行こうと思っている人の意思を高める効果はある」そうだ。ま、その程度なのに、すごい費用を掛けて街宣(車)をやるのはどうなのだろう(じゃあ選挙期間中に何をやるのかという問題はあるが)。

 大体、街宣部隊は選挙の花形である。出発前、到着時は事務所総出で拍手でお見送り・お迎え。事務所前を通る時には何をおいても飛び出していって手ふり。帰ってきたら「お疲れ様!今日はどうだった?さぁさぁお弁当食べて!」と下にも置かぬ扱い(ウグイスさんだけだが)。「今日は沢山手を振ってもらえました~」「反応だんだん良くなってますぅ~」みたいなことをウグイスさんがいえば、(大抵は事務局長が)「よし!良かった!これで頑張ろう!」なんて上機嫌で事務所が沸き立つ。

 そんな中でたまに「どうだった?」と話を振られて「一票も取れてないですね…」みたいなことを言って座がシラケかえってしまう(二度と聞かれなくなる)。正直、街宣車が回ってきて、手を振るのは「支持」でもなんでもない。私ならどの陣営が来たって振ってしまう。選挙が近づくと反応が良くなるのはどの陣営でも同じだ。

 それでもどうしても街宣をやるなら、少しでも票の取れる街宣を試みる。大抵は名前の連呼だが、短い政策を入れる。信号で止まったときは(最近ではアナウンスをやめる陣営もあるが)こんな時こそ聞いてくれるチャンスとばかり長めの台詞を入れる。まぁこんなことやっているのは他に知らないけど…。

 スポット演説に自信があるなら、音響装置まるごと移動できるのと、移動時間も宣伝できるので、あっても良いかなとは思います(スポット演説については別途)。

 かつて関わった選挙で、候補者の方が、演説はお上手ではない、人と話すのが苦手、政策も外見も人並みという方がいらっしゃいました。しかしその陣営、前任者から引き継いだ名簿と電話掛けをする人員があった。そこで採ったのが、電話部隊を中心とする方法。当選ラインがそれほど高くない自治体議員選挙なら、この方が確実だ。普段は日陰者扱いされている電話部隊(電話掛けの人に弁当を出す陣営は無い)に「あなた達こそ、この選挙の中心である」と認識してもらう。そして(これは市民の党の手法をパクったのだけど)電話掛けが楽しくなるしかけをちょっと入れた。

 相手はプロ中のプロ。プロのウグイス、大部隊、たすきはちまき、揃いのユニフォーム。「相手が二度と出てこれないように大差で勝たしてくれ~」と大運動を展開してきた。結果は、こちらが相手の二倍の得票で当選。もちろん作戦のせいだけではないが、取捨選択も一つの手だということだ。

ビラの中身と演説の中身の話

 アメリカ大統領の予備選の初期、バイデンは大学の教授みたいな話し方をしていて、当初本命だったのが、サンダースに大きく差を付けられて撤退も視野に入ってくるぐらいの支持率になってきた。予備選まであと一週間を切ったときにアフリカ系米国人のジム・クライバーン議員が、バイデンにアドバイスしたそうだ。

 「君のスピーチは上院議員っぽい。それじゃ選挙に勝てない」「私の父のようなものの見方をしなきゃダメだ。父は根本主義の牧師で日曜日の朝には説教をした。父は三つのものに力点をおいた。『君』と『君の家族』と『君のコミュニティ』だ」。

 それからバイデンの支持が急激に伸びて勝利した、というのは出来すぎの話に思えるが、「相手の関心事を話す」というのは真理を含んでいる。選挙の演説なら基本的には、この三つだけ話せばいいと思う。

 街頭で演説していても、それが聞いている人の役に立たない内容なら雑音だが、役に立つ内容なら「お得な情報」「耳より情報」だ。「何故、もっとでかい声で言わないんだ!」と言われてもおかしくない。「大きな音ですみません」なんていう候補者は自分の話の内容が意味が無いと自白しているようなもの。民主主義を支える重要な選挙に関する情報だ、誰を選んだらよいか、自分を選んだらあなたの生活にどんな良いことがあるか、あなたの子どもや孫にどんな良いことがあるか、しっかり伝えるべきだと思う。

 ある女性候補の応援演説でもこんなことを言ったことがある。「女性の議員が議会にいなくていいんですか。これからコロナワクチンの接種が始まるでしょ。その時に接種会場に子どもを預けられる用意してありますか?遠いところに住んでいるおじちゃん、おばあちゃんに預けにいくなんて非現実的でしょ。保育所が一時預かりしてくれますか?こんなこと、男性ばかりの議会や行政だったら気がつきませんよ!」。すると、道行く人が、明らかに歩きながら聞いているのが分かるのだ。「ん?あんた今何言った?」という感じで。お母さん世代だけでなく、祖父母世代も同様。

 実はこれ、当てずっぽうだったのだけど、東京都千代田区は預かり所を開設するとのこと。しかし、それに対して、「その人達はワクチン接種すんでいますか?」と質問されている方(女性)がいて、さすがに女性視線は違うなと感心しました。

 「相手の関心のあることを言う」は演説だけでなく、祝辞やメッセージでも当然使えるし、その為には相手が何に関心を持っていて、何を心配しているのかのリサーチが不可欠だ。それさえしていない人がなんと多いことか…。 皆さん、頑張って。ライバルは意外とダメダメですよ。

ビラ

 今回はビラである。

 どうして候補者・政治家の配るビラはああテカテカした紙で、自分の写真がでかでかと入っているものなのだろうか。中身は無いし、もらっても電車で読めないでしょ。もっと読める内容にして欲しい。

 思い出すのは、随分前になるが逗子市長もやっていた長島一由さんが言っていた、「ビラはつかみとひっぱり」と言う言葉だ。テレビ局にいただけあって、まず「読みたい」「何だろ?」と思わせる「つかみ」(タイトル)。そして次も読みたい(見たい)と思わせる「ひっぱり」が必要だというのだ。

 そこで、僕が都議選の候補者用に作ったビラの見出しが『渡る都政は鬼ばかり!』。どうですか。ちょっと読みたくなりませんか?結局使われませんでしたが…。

 長島さんというと、もう一つ印象的だったのは、逗子市長選に出る前に、「白表紙」の逗子市の問題と自分の解決策を書いた冊子を全戸配布したこと。カラー、顔アップとは全く逆の発想ですよね。コピーを大事に持っていたのですが、いま見当たらず…すみません。そういうことも必要です。他人が思いつかないことをやる。他人の思い込みを覆す。是非、やってもらいたいです。

 「配る」ことについても、書いておきます。よくビラを受け取ってもらえないと、「この地域は反応が悪いな。地盤が悪いな」とがっかりしますが、私に言わせると、ビラの受け取りは、結果であって原因ではありません。普段からその地域にファンを作っているか、誰かがその候補者を「よろしく!」と言っているから受けとってくれるのであって、受け取ってどうこういということは無さそうです。受け取りが悪ければ、「うわ、この地域はまだまだ開拓できる余地がある!」と喜べばよろしい。もちろん受け取ってくれれば嬉しいが、ビラでファンが増えるわけではないです。そもそも上に書いたような内容のビラでは。 というわけで、テカテカしてなくて自分の顔写真がデカデカと入っていないビラをお待ちしております!!

演説の「動き」

 この前、不思議な候補者の演説風景をネットでみました。ある首長選挙だったのですが、候補者が話しているときに、あっちを向いたりこっちを向いたり。それはいいとしても、無理矢理に手を振り上げて動かしている。まるでロボットのような感じなのです。おそらく選対に指示されて演説の時に腕を使うように言われたのだろうけど、あまりに不自然。そのせいか、この候補者の演説している動画はほとんどアップされておらず、探すのに苦労しました。応援弁士の動画はいっぱいあったんだけど(ちなみにこの人は当選しました…選挙は難しい)。

 肘を胸より上にもってくるのは、「パワーゾーン」と呼ばれて、力強い印象を与えます(一度鏡で見てください)。かといって、いつも同じようにするべきではないです。話している内容と手の動きが合ってないと、「愛してる」と言いながら中指を突き立てているような不自然な印象を与えます。

 有名な、バラク・オバマの2008年のベルリン・スピーチを見てみてください。抑制された中にも、右手を挙げたり、その手のひらを胸のところにもってきたり、リズミカルに動かして、段々上に上げたり、表情豊かです。そしてそれによってスピーチの説得力が増しています。https://www.youtube.com/watch?v=OAhb06Z8N1c で、それはどうして可能になったか。共和党の方も出しておきましょう。こちらはアーノルド・シュワルツネッガー(当時カリフォルニア州知事)の2004年共和党大会のスピーチです。これもオバマ2008ベルリンと並んで、ベスト10(いやベスト3か?)に入るぐらいの名演説です。https://www.youtube.com/watch?v=ZJJ6h72oiLk 冒頭から「わぉ、オスカーを受賞したみたいだな」と、ユーモアと観衆への賞賛を一発かましておいて、「私の出演作の一つは『トゥルー・ライズ』ていうんだけど、まさにそれは民主党大会に当てはまるね」と聴衆を湧かす。自分がアメリカの市民権を得たときの話(「一日中アメリカ国旗を背負ってそこら中駆け回っていたよ」)から、ソ連占領下のオーストリアでソ連兵の検問を通過した時の話(「本当に怖かった。だって、その時はまだアクション・スターじゃなかったからね」)など、一言一句説明したいぐらいの名スピーチですが、今回はアクションを見てください。まったく自然ですよね。しかし、スタッフによると、「自然に見えるぐらいになるまでに、猛練習していた」そうです。あの「大俳優」のシュワルツネッガーが「自然に」見えるようになるまで練習している!何故、世の中の候補者(や政治家)が練習しないのか、全く分かりません。共に頑張りましょう!!