政策担当秘書試験 令和3年度問題解説&資料

 大変お待たせいたしました。今春は多忙のため、昨年度の問題の解答例の作成と解説ができておりませんでした。今年の受験生の皆様、本当に申し訳ありませんでした。にもかかわらず、今年も受講者の中から合格者がでていただき、本当に感謝しております。

 というわけで解説と、問題文に抜け落ちている資料で、これではと思うもの、ぴったりではないですが、これぐらいあれば解けるのではないかと思う資料を探して添付しておきました。どうぞご参考になさってください。

令和3年度問題解説
課題1
①AI時代に対応した人材とは。AIの応用や利用の観点から。
②データサイエンスのスキルの習得やブラッシュアップには、どのような学びの仕組みが必要か。

 課題1(必修)はAIに関する問題でした。いかにも出そうな中立的かつ現代的な問題です。機械化と労働の問題は日本に限りませんが大きな問題ですし、最近の試験でも繰り返し聞かれています(令和2年度の課題3(選択)「先端技術と労働」)。
 労働の問題と幅広く捕らえれば、平成31年度(令和元年)課題1(必修)「外国人労働者」、平成28年度課題3「男女共同参画社会」の①M字カーブ、平成25年度課題2(選択)「若年層の雇用問題」でしょうか。
 なんとなく、資料からデジタルの知識だけじゃなく他の分野とダブル・トリプルの知識が必要なのか、応用する分野の知識も必要なんだな、ということが分かると思います。資料は②の問題を考えると1~3まででしょう。資料3は分かりやすいですが、資料1,2はどこを使って、どう読み取ったらいいのか分かりにくいです。もう感じたことは全部「えいやっ」と書いてください。そして、全体講評にも書いてあり、私も何度も言っていますが、資料から事実を指摘したら、かならず「評価」を入れてください。全体講評にも「自らの考えを述べず、資料の解釈のみを詳述する答案もあった。」と書かれています。短くてもいいので、「○○である。(だから)△△である」または「□□と思われる」と評価を書いてください。
 課題②は、単純にいえば、「早いうちからデータサイエンスを学ばせる、強制ではないけど半強制的に学ばせる、その為には大きな大学の方が教員が揃えられて有利」ということではないかと思います。
 全体講評では、高校からの教育や文理融合について書いているのが少なくて「やや意外だった」と書いています。これだけ資料に沿った「大喜利(おおぎり)」みたいな問題を出しておいて、自由な発想を求めるなんてそれはないでしょう、と言いたくなりますが、これも数年前から書いていますが、最近の試験は、独自のアイディアを高く評価しています。もちろん独創的なものでなくて大丈夫です。今回の課題1のように資料が少なめの問題は、資料から離れた解決策を入れると評価されるようです。

課題2(選択)
①気候変動はどうして安全保障問題といえるのか。
②わが国は東南アジア地域における外交政策として、どのような政策をとるべきか。

 これは今回の3問の中で一番書きやすかったのではないでしょうか。資料が指し示しているものが比較的はっきりしています。ただ全体講評にあるように、「外交」問題ととらえるのは少し難しかったかもしれません。気候変動→安全保障問題→外交問題と、最後に外交問題として、どのような提案をするかについては、アイディアが必要です。
 全体講評では、資料にまったくでてこない中国との関係について論じるものがなかった、残念だった、と言っていますが、無理でしょ!
 災害協定や移民協定など、存在すら知らないと思いつくのは難しかったかもしれません。そういう意味では、多少知識があった方が有利です。これも何度も言っていますが、知識を問う試験ではありませんが、多少あった方が(早く気づくという点で)有利な試験です。

課題3
①わが国のジェンダー平等をめぐる課題を挙げ、それら改善に資する社会的環境を作るための提言をせよ。
②国政報告会の参加者にジェンダー平等の理念や目標などを平易に説明する文章を作成する。

 課題3は、逆に資料がいっぱいありすぎて、全資料に力一杯言及してしまうと時間が足りません。できるだけ広く薄く、それでいて落とさないように書く訓練が必要です。短い言葉で書く。それには、やっぱりパソコンを使って何度も書き直すのが良いと思います。安倍元総理の追悼演説で有名になった野田元総理も、名演説を生み出す秘訣は日々の(記事の)書き込みだというような趣旨のことをおっしゃっています。意外と、頭で思っていても書けないんです。書いても回りくどい言い方になって時間をロスしてしまう。短く簡潔に、しかも意味が明瞭な文章を書けるようになるには日々の訓練が必要です。
 この問題も資料が三カ所も抜けていて、勉強しようとする人にとって不親切です。一応、これかな?と思うものをつけておきましたが、見つけたものがちょっと長いので確信がありません。この点は、本当に改善してもらいたいです。

 全体的に、3問ともそれぞれ違う理由で例年より難しく感じました。合格者さんのお話を聞いても、おそらく解答例で書いたような全部の論点を書けていなくても、6割ぐらいの点で合格しているのではないかと思います。できるだけ論点を落とさないように、頑張ってください!!

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政策担当秘書試験合格者オリエンテーション

昨日、政策担当秘書試験合格者オリエンテーションがありました。
 今年の受験申込者207名、合格者18名。申込倍率11.5倍、欠席があるので実質競争倍率は7.9倍です。
 政策担当秘書出身の大西健介衆議院議員、梅谷守衆議院議員、高山智司元衆議院議員も来られて、政策担当秘書制度をサポートしていくと熱く語っていただきました。
 合格後もこのように先輩達がサポートしますので、来年も是非沢山の方が受験されますように!

衆議院総選挙が終わって

 総選挙が終わって、まだ疲れも癒えていませんが、得た知見をボチボチ書いていきます。

 今回は(選挙)事務所の雰囲気について。

 概して、高学歴な候補者のところは事務所がエグくなる傾向があるように思います。これは(当たり前すぎて誰も書いてないのであえて書くと)受験や資格試験は「陸上」のような個人競技で、独りの頑張りでなんとでもなる。

 対して選挙は「サッカー」とか「野球」みたいなチーム・スポーツに近い。 ルールというか、そもそも種目が違う。自分より(ある分野で)能力の劣るスタッフが失敗して「何やってんだ!バカ!」と怒るか、「ドンマイ!ドンマイ!次取っていこう!」と言うかの違いである。もちろん後者が有利。

 勝つ事務所、特に奇跡の逆転劇をするような事務所は、終盤に向かって「わっさ、わっさ」という活気がある。

 自分の力が120%、いや140%ぐらいでているような錯覚におちいるときもある。フローの状態になる。こんな経験があるとやめられない(それでも「投票日があと1日後だったら」とか「あと一週間あったら」という選挙はざらにある。だから時間管理が大事なのです)。

 落選した候補者の人も、色々な思いがあるだろう。曰く「選挙区が悪かった」「時間がなかった」「回りのスタッフが悪かった」あげくに「有権者が悪かった」。

 事務所の雰囲気の責任は、第一に候補者にあります。

 ある寺の前に張り紙がしてありました。「他人は変えることは出来ないが、自分は変えることが出来る」

(だから、某政党の「変えよう。」というポスターをみて、「変わろう」じゃないのか?と思っていた。「変えよう」というのは、自分が正しいと思っている人の上から目線。これが受け入れ得られるのは、皆がそう思っているような特異な状況の時だけ)。

 負けたときにしか変われない。負けたら、天の恵みと思って反省したら良いです。

 勝ったら反省しない。初回の選挙は手伝うことが多いが、2回目は手伝わない。ほとんどの候補者は、初回は何でも聞いて学ぼうという姿勢があるが、勝つと人の言うことは聞かなくなる。

 勝ちが続くと天狗になる。何連勝もしている人が突然、落選する。常に自分を省みて、反省し改善していく希有の人だけが連続当選していく。「変えよう」じゃなく、まず自分が「変わろう」。次の選挙はもう始まっています。

 数々の困難を乗り越えて、信を問うた人。あなた達は、地域の、この国の、世界の宝であり、光です(私たちにはとてもあんなことは出来ません)。頑張ってください。そして私達も頑張ります。

演説(技術的な話)

いよいよ総選挙が迫ってきました!今回は演説のちょっと技術寄りの話。



 前に「ストーリーが大事だ」と書きましたが、視点を変えて言うと「絵を見せるように話す」ということです。これは二つの意味があって「誰にでも分かるように、話の筋道を付けて話す」という意味と「情景が浮かんでくるように話す」という意味です。前者は、話す内容が誰でも分かりやすい順番で話すこと。よく「今日は三つの話をします。一つ目は○○・・」というのが教科書には載っていますが、はっきり言ってダサい。誰でも分かるようにストーリーを工夫してください。
 かつ、よく言われることですが、アメリカ大統領の演説は日本で言うと中2ぐらいの英語で話されています。難しい言葉(専門用語)を使わないように。
 もう一つは、ユーミンの旦那、松任谷正隆が曲をアレンジして、ミュージシャンに指示するときに「風景が浮かんでくるように」と言うそうですが、演説も同じです。

対比
 次に「対比」です。演説に対比を取り入れると、際立つし、印象に残りやすい。次の演説は35人学級法案の賛成討論です。
「何度も言われていることですが、我が国は、いまだOECD諸国の中でGDPに占める教育費は最低レベル、平均学級規模はOECD平均二十人に対して二十七人と、これもある意味で最低レベルです。一方、教職員の労働時間は群を抜いて長い環境にあり、教育の質の担保を子供たちのためだからという教員の善意の労働に頼るのは限界に来ています」
 オバマの超有名な「赤い州青い州」演説(2004年民主党大会)もそうです。
「そこで今夜、私は彼らにこう言いたい。リベラルなアメリカも保守のアメリカもない。あるのはアメリカ「合衆」国だと。黒人のアメリカも白人のアメリカもラテン系のアメリカもアジア系のアメリカもない(このあたり速い)。あるのはたった一つの(間をおく)アメリカ(United States of America)」
 っていう感じで、実にカッコいいんですよ。で、次の「間」です。



 オバマを批判する人は「オバマの演説って良く聞いたら中身ないよね」と言いますが、当たらずとも遠からずで、言い切ってしまうとオバマ演説の肝は「間」です。間の取り方が圧倒的に上手い。私も時々音楽代わりに聞いてますが、演説が音楽的です。「空白」が「物事」を際立たせるので、是非「間」を習得してください。

Litany(リタニ)
 最後は聞き慣れない言葉ですが、リタニとは「連祷(れんとう)」と訳されることが多いようです。日本のスピーチの本ではほとんど見たことがありませんが、海外だと当たり前のように使っています。
 本来は、キリスト教カトリックでの、聖職者と会衆が交互に「主よ哀れみたまえ」「キリストよ哀れみたまえ」のような定型句を唱えるなどの、反復的な形式の祈りを指すようです。
 要は、演説の一番盛り上がるところ=一番言いたいところで、リズムよく繰り返して訴えるということでしょうか。キング牧師の「アイハブ・ア・ドリーム」を思い出していただければ良いかもしれません。
 日本人で上手く使っている人をみることは滅多にありませんが、是非取り入れて欲しいと思います。

スピーチライターの悲しみ

 今日、「演説とSNS発信の活用を考える超党派国会議員勉強会」というのがあって、選挙ドットコムチャンネルでおなじみの選挙プランナー松田馨さんやスピーチライター千葉佳織さん、最近話題のSNSアナリスト中村佳美さんらが出られるので、参加してきました。


  海外の名演説、ヒラリー・クリントンの北京第4回世界女性会議演説(「人権は女性の権利であり、女性の権利は人権である」)とか、ロナルド・レーガンのノルマンディー上陸作戦記念演説(「私たちは寂しい、風の吹きすさぶ、フランスの北の海岸に立っている・・」)とか、海外では、ちゃんとスピーチライターが評価され、そのことによって話者の評価が下がるなんてことはないのだけど、日本ではスピーチライターって評価も活用もされていないように思う。もっと活用され職業として確立されてもいいと思うのだが。


 とはいえ、「どの演説のどの部分は私がやりました!」と言えないので悲しい職業ではある。さらに、大きな舞台での演説になるとチームで書くので書いた部分も細切れになったりする。米副大統領のスピーチライターだったロバート・ラーマンが、同僚に「お前のライン(書いたもの)、大統領の就任演説に使われてたな!」と言われて、本人がびっくりしたという話がある。


 スピーチは、専門家の本を読んだり動画を見ても、体得するのが難しい。一般的なことを言われてもなかなか良くならない。
 最近、ナシーム・ニコラス・タレブの『身銭を切れ』という本を読んでいたら、納得するところがあった。やったことや言ったことの結果が自分に及ばないコンサルタントや官僚や評論家や経済学者や銀行家の意見は聞いちゃダメだと(逆に、自分の仕事が自分の評価・金銭に直に跳ね返ってくる職人や起業家や投資家などは信用できる)。


 専門家をディスっているわけじゃないけど、その結果が直に身に降りかかる人と、それ以外の人ではやっぱり感覚は違うかな。概論を知っている有用性は確実にあると思うけど。


 というわけで、私が協力した原稿が来週の代表質問に一部でも残るのか、全削除なのか、ちょっとワクドキ。

マイクの写真

政治家と三つの輪

 選挙シリーズもいよいよ佳境に入ってきました。って、「一体いくら書くことがあるんじゃい!」という感じですが、この際すべてのノウハウお伝えします。

 ずいぶん前ですが、民社党(若い人知ってます?)の高名な理論家という方を紹介されて、ご自宅に通っていた時期があります。その時に教わったのが、「政治家には三つの輪がある」という話。

 つまり、「お前のことは嫌いだが、お前の政党は好きだから入れてやる」という人もいれば、「お前の政党は嫌いだが、お前のことが好きだから入れてやる」という人もいる。「お前もお前の政党も嫌いだが、お前の政策は好きだから入れてやる」という人もいます。

 政党・人・政策、この三つを使い分けて、どの人にはどれを強調すればいいのか、どの場ではどれを強調すればいいのかを選んで話す(説得する)ということです。

 野党系だとたいてい政党の支持が弱いので人物か政策になるのですが、新人の場合、政策があんまり分かってないので、党のパンフレットかキャッチコピーを連呼することになりがち(「政権交代!」「改革を止めるな!」等)。なかなか武器になりません。政策は横浜市長選のようにタイミングがあえば、政党が弱く本人も知名度がない場合でも一気に上がる要素になります。政党も弱く、政策もイマイチなら「人物」です。

 衆院選を戦う皆さん、時間はあまりあませんが、頑張ってください!!

合格者オリエンテーション

gokukaku

 昨夜、政策担当秘書試験の今年の合格者の方のオリエンテーションがありました。


 例年のごとく、資格取得者で「政策担当秘書・族議員」自ら呼ぶ大西健介議員のご挨拶、事務局の説明の後、先輩合格者との懇談を行いました。なかなかわかりにくい仕事&仕組みで、情報もないなか、合格者の方も大変です。私たちも一生懸命伝えようとしていますが…。


 大西先生が令和3年2月26日予算委員会第一分科会での質疑で、政策担当秘書について質問されていて、合格者のケアとかに対して前向きの答弁を引き出しているので、既合格者の方も、これから受験の方も(少し)期待して待っていてくださいね!

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/hisho/index.html

選挙のスケジュール感

選挙における時間(期間)の感覚っていうのは、普通の感覚と違う点がある。ここは経験者に聞いた方が得策です。
 大体、バタバタと緊張の中で公示日を迎えて、その日は全力で活動する。選挙期間は(通常)衆議院選が火曜日から始まって次の次の日曜日までの12日間、参議院が17日間。いずれも土日を挟むのだけど、それが「スーパーサタデー&スーパーサンデー」で選挙期間の一番の山場。人の多いスーパーや行楽地や商店街に繰り出して、アピールをするチャンスとなる。
 本当はその前の金曜日から土曜日にかけて、報道各社の調査が入り、結果が日曜版か月曜版の紙面に出るので、金曜日までに有権者への浸透を図っておくべきだ。そして金・土に入れた情勢がひっくり返ることは…実はあんまり無い。
 普通は選挙が始まってからが「選挙」だと思うが、本当は「選挙期間の第一金曜日」までが選挙だと思った方がいいぐらいだ。
 選挙活動って「やまびこ」みたいなもので、有権者に届くまで時間がかかる。本人は「俺こんなにやってるのに」と思ってても、有権者に認知されるには相当の時間がかかる。選挙終わってから「あれ、出てたの?知ってたら入れたのに」とか言われることもまれではない。だからこの「時間差」も計算して活動するべきだと思う。
 別の時間感覚の話。選挙の本質を小説で書いた『当確師』だったか『選挙参謀』だったか忘れたけど、選挙本番までに(昔は)後援会で集会などのイベントを打っていくのが普通だった。そこで、「一つのイベントをやったら休憩期間を入れろ、後援会が疲労してしまうから」という記述があったが、これも選挙における時間の計り方の一つだ。
 さらに最近では、ネットでの選挙も重要になってきているので、「すくなくともこの時期には○○人ぐらいフォロワーが欲しい」とか(期待通りにはならないだろうけど)念頭に置いておくのも必要だ。普通、いきなり面白い文章はかけないから。
 以前、選挙の途中で(劣勢になった)候補者から、いきなりツイッターやりたいと相談を受けたことがありましたが…。無茶なことはやめてね。その時は、その方がツイッター向きではないキャラクターだと思ったのでやりませんでしたが、別の候補で選挙期間中に始めて一定の効果があった場合もあります。
 いずれにせよ、選挙には独特の時間感覚があるということを意識しておいてください。

選挙で勝つには

 選挙で何をやるかというと、まずその規模で違う。

 市町村会議員なら、最低当選ラインを見極めて、その2倍の得票を目標に活動する。1000票で当選なら2000票。雨が降っても槍が降っても投票に行ってくれる人を探し出す。意外と「おう、応援しているデ!」とか言っても投票に行ってくれなかったりするのだ。自分に置き換えたら分かりそうなものだが、雨が降ったらやめようかと思うし、レジャーの予定が入ったらやめようかと思うのが人情。自分が思っているほど、他の人は大事に考えてくれない。だから、必ず投票に行って自分に入れてくれる人を探し出す必要がある。

 これが有権者数40万、50万とかの衆院選とか都議会議員選とか、200万人の参議院選(選挙区)とかになると様子が変わってくる。ほとんどの有権者は候補者を実際に見ることもなく、手紙や電話でもなんら接触されることなく投票をすることになる。どんなに頑張って街頭活動をやっても、有権者の数%しか会えない。

 で、多くの人が考えるのがネット作戦。ネットについては別立てで書きますが、概して使い方が下手。まず写真が遠目で、何を狙って、何を伝えたいのか分からない。記事も、他人の記事の引用とか食事とか、たまにはいいけど、自分の個性とか主張が伝わる物を挟み込まないと面白くない。ま、これは長くなるので置いといて。

 じゃ、何をするのか。前にも書いたが、有権者が判断するときに一番利用しているが「選挙公報」。だからこれには注力する。

 次は、公示日のニュース。大体、一般の人の関心は、「選挙始まりました!」の初日、「いよいよ明日が投票日です!」の最終日に高くなる。初日のニュースは、どの候補でも平等に報道される。ここで、一番自分が言いたくてポイントになるところ、争点にすべきところを放送してもらうべきだ。放送局がどの部分を使うか分からないって?大丈夫。どう考えてもこのフレーズでしょ!というところがあるはず。なければ作るべきです。

 あとは選挙期間中に幸運にも放送してくれることがある「注目の選挙区」みたいな番組。候補同じ時間が配分される。私が入った選挙でもそれがあった。NHK7時のニュース特番。一体何人の人が見てくれるのかと思うと目もくらむ思い。チマチマと駅でビラを配っていることを思えば桁違い。これを最高の物にする必要がある。

 候補者の方がお医者さんだったのだが、幸運なことに事務所の入っているビルに使われていない診察室があった。ここで座談会してその様子を撮影してもらうようセットした。そしたら候補者本人さらりと白衣を着こなして入ってきました。もう誰が見ても、この候補者はどういう人で何を主張しているのかが明白。ちなみに、この方は最初ご自分で「絶望」とおっしゃっていたのですが、見事当選。もちろん何度も言っているようにこれだけの理由ではないですけどね

 自分で褒めたいのは(誰も褒めてくれないので)、この診察室パターンが万が一採用されない時の為に、予備で保育パターンも撮っていたこと。子どもを呼んでおもちゃも持ってきてもらった。ただ子どもの声が大きすぎて採用されなかったようだけど・・・。

 これと対照的に全く意味のないのが、選挙後に放送される「選挙振り返り番組」の取材。選挙期間中はいろいろ規制があるので、選挙後にワイドショーなどで使う映像のための取材が入ることがある。これはまったく投票と無関係、はっきり言って邪魔。

 私の関係した某選挙では、選挙戦の重要なところでこの取材のために相当の時間と労力を割いていた(そこではペーペーだったので意見できず)。結果、当初有力と言われていたこの候補者の方は落選しました。 と言うわけで、いろいろなメディアと上手く付き合って、有権者の方にリーチしてください!

横浜市長選

 横浜市長選、実に熱い戦いでした。今回も学べる点が沢山ありました。まったく選挙って、進化していて、奥も深くて、究めるのが不可能なところが魅力ですね。

 まず演説です。当選した山中さんは、多分陣営から「新人なので、まず顔と名前を売ること」と言われていたんだと思いますが、演説の途中に何度も「私、山中竹春は」と名前を挟むので結構聞きづらい。これよくある選挙のカン違いで「顔と名前を売る」のが重要なのは確かですが、文字通りにとらないほうがいいです。

 驚きだったのは田中康夫の演説。一人で50分ぐらいしゃべるのだけど、全然あきさせない。声を張り上げるわけでもないのだけど、知事をやっていたこともあり、話が具体的で分かりやすい。後半追い上げたわけが分かる。最終日の最後20時前にたまプラーザ駅前で観たのだけど、300~400人(あるいはもっと)の人が立ち止まって、身動きもせずに聞いている姿っていうのは、(世間ずれした私でも)身震いが来るような「この国の民主主義はまだ死んでいない!」と思うような印象的な光景でした。やっぱりまだ言論にも力はあるのだ。

 ある人が「応援弁士なんて面倒くさいだけで要らない」とどこかでおっしゃっていたのですが、ある意味なるほどと思いました。本人がしゃべれるなら応援弁士は不要ですね。

 あと福田峰之さんの演説も良かったらしいのですが、観られずに残念。福田さんはバーチャル選挙事務所を開設したりしていて「選挙はどこまでDX化できるか?」という点でも非常に興味深い選挙をされていたと思います。

 選挙公報の分析も面白いです。実は有権者の方が、投票先の判断に使っている最大の材料は「選挙公報」だというデータがあります。だのに何故か候補者の方はこれを軽視している。文字が多くなく、少なくなく読みやすく伝わるものを!これが最大の情報源なのだから、もっと注意と時間をかけてもいいはず。

 選挙ポスターについては、プロのカメラマンの方の記事があり、大変興味深く読ませていただきました。https://muto.photowork.jp/entry/yokohama_2021。 しかし小此木さんのポスターと林さんのポスターは、すごい昭和だった・・・。好きな人もいるかもしれませんが、これでは勝てないでしょう。

 SNSの使い方に関しては、Yoshimi Nakamuraさんの書かれた記事 https://note.com/snspoliticslab/n/n485306152a8b が参考になります(今回、俺手抜きだな)。