演説(技術的な話)

いよいよ総選挙が迫ってきました!今回は演説のちょっと技術寄りの話。



 前に「ストーリーが大事だ」と書きましたが、視点を変えて言うと「絵を見せるように話す」ということです。これは二つの意味があって「誰にでも分かるように、話の筋道を付けて話す」という意味と「情景が浮かんでくるように話す」という意味です。前者は、話す内容が誰でも分かりやすい順番で話すこと。よく「今日は三つの話をします。一つ目は○○・・」というのが教科書には載っていますが、はっきり言ってダサい。誰でも分かるようにストーリーを工夫してください。
 かつ、よく言われることですが、アメリカ大統領の演説は日本で言うと中2ぐらいの英語で話されています。難しい言葉(専門用語)を使わないように。
 もう一つは、ユーミンの旦那、松任谷正隆が曲をアレンジして、ミュージシャンに指示するときに「風景が浮かんでくるように」と言うそうですが、演説も同じです。

対比
 次に「対比」です。演説に対比を取り入れると、際立つし、印象に残りやすい。次の演説は35人学級法案の賛成討論です。
「何度も言われていることですが、我が国は、いまだOECD諸国の中でGDPに占める教育費は最低レベル、平均学級規模はOECD平均二十人に対して二十七人と、これもある意味で最低レベルです。一方、教職員の労働時間は群を抜いて長い環境にあり、教育の質の担保を子供たちのためだからという教員の善意の労働に頼るのは限界に来ています」
 オバマの超有名な「赤い州青い州」演説(2004年民主党大会)もそうです。
「そこで今夜、私は彼らにこう言いたい。リベラルなアメリカも保守のアメリカもない。あるのはアメリカ「合衆」国だと。黒人のアメリカも白人のアメリカもラテン系のアメリカもアジア系のアメリカもない(このあたり速い)。あるのはたった一つの(間をおく)アメリカ(United States of America)」
 っていう感じで、実にカッコいいんですよ。で、次の「間」です。



 オバマを批判する人は「オバマの演説って良く聞いたら中身ないよね」と言いますが、当たらずとも遠からずで、言い切ってしまうとオバマ演説の肝は「間」です。間の取り方が圧倒的に上手い。私も時々音楽代わりに聞いてますが、演説が音楽的です。「空白」が「物事」を際立たせるので、是非「間」を習得してください。

Litany(リタニ)
 最後は聞き慣れない言葉ですが、リタニとは「連祷(れんとう)」と訳されることが多いようです。日本のスピーチの本ではほとんど見たことがありませんが、海外だと当たり前のように使っています。
 本来は、キリスト教カトリックでの、聖職者と会衆が交互に「主よ哀れみたまえ」「キリストよ哀れみたまえ」のような定型句を唱えるなどの、反復的な形式の祈りを指すようです。
 要は、演説の一番盛り上がるところ=一番言いたいところで、リズムよく繰り返して訴えるということでしょうか。キング牧師の「アイハブ・ア・ドリーム」を思い出していただければ良いかもしれません。
 日本人で上手く使っている人をみることは滅多にありませんが、是非取り入れて欲しいと思います。