令和7年度政策担当秘書資格試験 解説と解答(2)

それでは解答例です。

課題1(必須)

(解答例)
① 住宅セーフティネット法は、低額所得者や被災者、高齢者、障がい者、子どもを養育している者、外国人やDV被害者などの住宅の確保に特に配慮を要する者を「住宅確保要配慮者」として配慮を求めている(資料1)。この法律が制定された背景には、社会状況の変化がある。一つには、一般世帯総数の増加にくらべ、平均世帯人数が極端に減っていることがある(資料2)。これは、単身または二人世帯が増加していることを示している。また、一般世帯総数に占める世帯主65歳以上、75歳以上、85歳以上の世帯の割合も年々上昇し、2050年には半分近くの世帯の世帯主が65歳以上になると予想されている(資料3)。こうした数字から、高齢夫婦のみ、もしくは高齢で単身といった世帯が急増してくことが読みとれる。これに対して、総住宅の増加率は低下する傾向にあり、こうした新しい社会ニーズに適応した住宅が十分に提供されていない恐れがある(資料4)。大屋側としても、高齢者や単身者、低所得者などに住宅を貸す場合に、家賃が取れない、返還に困難があるなどのリスクがあり、なかなか借り手とのマッチングが進まず、住宅確保要配慮者自身では住宅を確保するのが難しい。
令和6年に改定された住宅セーフティネット法でも①大家が賃貸住宅を提供しやすくする市場環境を整備すること②居住支援法人が入居サポートを行う賃貸住宅の供給促進③福祉政策と連携した地域の居住支援体制の強化が挙げられている(資料5)。 住宅確保用配慮者に対する大家等の意識が5年前より、全体的に拒否感が薄れてきているものの、まだ相当程度残っている。特に障がい者に対する拒否感が強い現状もあり(資料6)、拒否感を緩和するような対策が必要である。具体的には、行政や支援法人のサポートを手厚くすることや意識改革の醸成、敷金・保証金などを個人ではなく保証方式で負担することなどが考えられる。
また、全国的な空き家率の推移を見ると、右方上がりに上がっており、30年前に比べて空き屋率はほぼ倍増している。賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家も空き家のうち、約半数をしめており、自宅が長期不在となって空き家となっている例が多数にのぼっていることがわかる(資料7)。このように空き家自体は増えているので、これらを行政や支援法人などが介入することによって住宅確保要配慮者に貸し出すことや、空き家を改装して単身高齢者にも済みやすいものにリフォームして貸し出すなどの施策が考えられる。
② ①で挙げられた課題以外には、三大都市圏、特に首都圏でのマンション価格高騰が挙げられる。住宅地の地価は近年上昇しており、首都圏と三大都市圏の住宅地での上昇が特に激しい(資料8)。また、首都圏のマンション価格は近年バブル期に比するような異常な高騰をみせている(資料9)。首都圏と全国のマンション価格の年収倍率を比較しても、令和5年で、9.6倍対7.7倍と通常のサラリーマンなどが住宅を購入する年収倍率をはるかに上回る価格となっている(資料10)。これでは人口が集中する首都圏で、多くの人が十分な住宅を得ることが不可能になる。この原因は様々考えられるが(資料11-1)、とりわけ大都市圏の中でも東京の価格水準の高さが際立っており(資料11-2)、企業の本社などが集中し経済の中心地である東京に住居を持てなくなると遠隔の地から通勤せねばならず、通勤時の混雑や時間のロス、住環境の悪化、生活の質の低下など社会的損失は甚大なものとなる。
こうした東京を中心とした都市圏のマンション価格高騰への対策としては、空き家となっている物件を住居として利用促進させるような税制の導入(空き家税)、所有者不明の物件に関しては行政が介入して、開発をすすめること、取引規制をもうけて投機的取引を規制することなどが考えられる。
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課題2(選択)

(解答例)
① 一般会計の歳出規模は、通常はほぼ横ばいの規模で推移してきたが、例えば2009年のリーマンショックの後や2020年のコロナ禍の際に景気対策などのため歳出規模が急拡大した。その後、いくぶん縮小されるものの、以前に比べて高止まりする傾向にある(資料1)。これは一度高まった支出規模をなかなか減少させられないことを示している。結果として、政府の債務残高対GDP比は、2009年の198%から2024年の251.2%と一貫して高い水準にとどまっている。金融資産を差し引いた純債務残高でも、2024年で155.8%と主要7カ国の中では最も高く、100%を上回っているのは日本の他にはイタリア(126.6%)とフランス(104.4%)のみとなっている。これほどまでに、一般会計の予算規模が拡大してきた背景には、高齢化がすすんでいくなかで、医療費や年金などの社会保障費用が増大してきたことがあげられる。2040年には、65歳以上の人口割合が34.8%、75歳以上の割合が19.7%にまでなると予測されており、今後ますます医療や介護、年金などへの支出が増加すると推測される(資料3)。国債残高の増加にも係わらず、これまで低金利であったことからリバライ費はおおよそ横ばいの推移を保ってきた。しかし、令和7年度には金利が上昇し、利払い費が10兆円を超える事態となっている(資料4)。消費者物価も2021年を境に上昇を続けており(資料5)、この金利上昇は収まる気配を見せないことから、さらに利払い費が増加することが考えられる。また名目賃金は上昇したとはいえ、インフレにより実質賃金はわずかにプラスまたは小規模事業所の従業員ではマイナスになっており、所得税収入の大幅な増加は望めない。また、こうした実質賃金が伸びていない状況では、消費が回復せず、消費税や法人税等の収入の大幅な増加も見込みがたい(資料6)。さらに、日本の地勢上の特色として、大規模地震の危険に晒されていることがあり、大きな災害が予想される南海トラフ地震の発生率も高くなっている(資料7)。こうした災害への対応の為にも、耐震化などの予算がこれからますます重要になってくる。さらにいえば、災害後の復旧のためにも、負債額を減らしておくことが重要だと思われる。また、近年日本含む世界の安全保障環境は悪化しており、各国が国防費を増加させている(資料8)。この状況はすぐに好転するとは思われず、今後も相当の防衛費の伸びが必要となってくる。これらを総合すると
② 政府の中長期の経済展望でも、最も成長率が高い成長移行コースでも、名目経済成長率が最高で3.0%、過去投影コースで0.7~0.8%と見込まれている(資料9)。名目経済成長率が、名目実効金利よりも高い場合には、債務残高対GDP比が安定または低下するが、これが満たされないと財政赤字が続けば債務残高対GDP比が発散・拡大するリスクがある(ドーマー条件)。これらの状況から考えると、医療費に一定のキャップをかけることや徹底した行政改革などで支出の増加を抑えていく一方で、新税の創出など、経済成長を阻害しない範囲で歳入改革を行うなど、厳しい財政運営をしていかなければならないと考えられる。1335字

課題3(選択)

(解答例)
① 主に赤道近辺の国家で生産されるチョコレートなどの原料であるカカオの最大の輸入先はヨーロッパである(資料1)。近年、例えば第二位の生産国であるガーナ共和国では、毎年のように森林減少が起こり、その面積も増加している(資料2-1)。その減少はカカオ生産地域において著しいことから(資料2-2)、カカオ生産によって森林が減少しているという因果関係を読み取ることが出来る。カカオの最大の輸入国であるEUはこの森林減少の問題に対して間接的な責任があるといえる。先進国に需要が有る限り、生産国では限りなく生産を拡大しようとする。その為に森林が減少する。この連鎖を止めるには、需要側からの規制が必要である。よって、EUの木材規制(EUTR)に替わるEUDRが制定されたときに、森林減少の原因となっているカカオとその関連製品であるチョコレートを規制の対象にした。

(ア) EUDRの前身であるEUTRの仕組みは、事業者にデューデリジェンスを行う義務はあっても、各国の所轄官庁にその内容を報告する義務はない。EUDRではEUの情報システムにデューデリジェンス声明の提供を義務付けた。また、デューデリジェンスにおいて把握すべき生産地に関する情報も、伐採国とその国における地域などから、生産地の緯度経度情報などに変更された(資料3)。
(イ) これはEUTRの取り組みでは、所轄官庁が内容を把握することができず、それでは実効性が担保されない為に変更された。実際に、認証されたカカオの生産量と世界全体に占める割合は2017年をピークにむしろ低下している(資料4)。また、カカオのトレーサビリティに関しても、生産者共同組合レベルまでは一定程度追跡できても、農園レベルまで追跡可能なカカオの割合はトレーダー、加工業者によっては、非常に低い水準になっている(資料5)。効果的な対策の為には、実際の農園のある場所にまで遡ってのトレースが必要である。これらの目的のためにEUTRの仕組みは変更された。
③ ガーナにおけるカカオ生産者の収入は、国際貧困ラインを下回っている(資料6)。一方、世界のチョコレート市場規模は、拡大の一途をたどっており、今後もさらなる拡大が予想され(資料7)、このまま放置していれば、さらなる森林破壊が進むことが予想される。農家にとっては、カカオの一次産品的な性格から、産出量が増えても収入が逆に減少するなどの特徴が存在する(資料8)。こうしたカカオ農家の貧困状況を改善しなければ、経済的理由から森林を開拓し、カカオ農場に変えようとする誘因はなくならない。我が国はこうしたカカオ農家を取り巻く環境を改善すべく、適切な収入が確保できるようフェアトレードなどの仕組みで流通しているかなどを調査の対象に加えていくことが考えられる。また、こうしたカカオ農家の経営状態を改善するための直接的な支援の状況も報告の対象とすべきである。
1205字

過去問リストも更新しましたので付けておきます。

政策担当秘書試験出題傾向(過去問一覧)

というわけでこれ以上詳しい解説や過去問の解答例は「受かる!政策担当秘書試験」「受かる!政策担当秘書試験2」で!

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