令和6年度政策担当秘書資格試験 解答例と解説(2)解答例編

令和6年度問題解答例

課題全文については衆議院・参議院のサイトで確認、ダウンロードできます。

課題1(必須)

AI やロボット等の導入は、我が国の経済成長や所得分配に影響を与え,雇用の視点からも多くの課題を生じさせる 。

以上の記述及び次頁以降の資料を基に,次の問いに解答しなさい。

①AI やロボット等の導入は,雇用や経済成長などを通じて,財政にどのような影響を与えるか。

②ロボット税が必要かどうか。

③ロボット税を課す場合には,どのように課税するのがよいか 。

解答例

①ロボットは、その自立性を生かして危険環境下での作業代行や、高速高精度の生産、サービスやエンターテイメントを通じての日常支援など様々な分野で人々の生活向上に役立つことが期待されている(資料1)。実際に、世界中で労働者1万人当たりのロボット台数は2017年以降毎年約12%ペースで増え続けている(資料2)。製造業におけるロボット密度を見ると、韓国、シンガポール、中国、ドイツといった近年産業界で存在を大きくしている国が上位に並んでおり、製造業の成長とロボットの導入が密接な関係にあることがわかる(資料3)。日本の経済成長率を見ても、2000年から2005年、2010年から2015年などの成長率が高かった時期は、TEPの寄与が高く、技術進歩が経済成長にプラスの影響を及ぼしている。(資料5)。これは財政にとってもプラスの影響を与える。

 一方、ロボットの導入で労働者の職が奪われ、失業の増加につながるのではないかという見方もある。実際、AIの導入によって、一時的には機械化可能性の高い職種のタスクが減少するとされている(資料4)。日本の場合でも、先の2000年から2005年、2010年から2015年の成長率が高かった期間は失業率も高く、それに応じて失業に伴う現金給付も増えており、財政にとってマイナスの影響を与えている(資料6)。

②2020年以降、法人税の伸びとは対照的に所得税は2022年をピークにして下落傾向にある(資料7)。様々な要因が考えられるが、ロボットの普及により、機械で代替可能性のある職が喪失したことや低賃金化も一因だと考えられる。人が稼いだものに対しては課税されるが、ロボットが稼いだものに対しては、法人税として以外は課税されないのは不公平である。近年、積極的労働市場性政策に対する支出が増えていることからも、財源は必要であり、ロボット化によって所得の増えた企業に対して、一定の負担を求めることは合理的であると考える。よってロボット税は必要である。

③税は、「公平、中立、簡素」という課税の原則に則って、設計されねばならないと考える(資料8)。「公平」という観点では、ロボットの導入で収益の増えた企業に対して、負担能力の観点から(資料9)、法人所得税の税率を高め、より負担を求める方法が考えられる。しかし、ロボットを導入した企業とそうでない企業の区別をどうするかという問題が残る。また、法人の利益は利子・配当というキャピタルゲインとなって分配されるので、キャピタルゲインへの課税強化も考えられる。一方、「中立」の原則からは、ロボットの導入によって、かえってその効果より高い税金を払う事の無いように、増収分の一定の割合に止めるべきである。「簡素」という面からは、一律に法人に法人税の負担増を求めるのが良いが、先の「公平」の観点から、ロボット化を進めた企業には、補助金や控除で一部を戻す方法が考えられる。

1210字

課題2(選択)

①我が国と諸外国における文化芸術の制度や予算などの共通点や相違点について説明し、文化諸外国の制度や施策で我が国も取り入れるべきと思われるものを挙げよ。理由も説明しなさい。

②我が国のソフト・パワーを今後さらに高めるために,どの分野に力を入れるべきか提案しなさい。その際,自由や基本的人権の尊重といった普遍的価値を重んじる先進民主主義国家としての我が国がソフト・パワーの面で他国に対して優位に立つ上でどのような効果をもたらし得るかについても論ぜよ。特に我が国よりも表現の自由が制約されている諸国と比較すること。

解答例

①我が国では、文化芸術の意義が極めて重要であるとされていながらも、文化芸術基本法にあるように「基盤の整備及び環境の形成は十分な状態にあるとはいえない」(資料1)。これを他国との比較で見ると、予算額においても、政府予算に占める割合をみても、国民一人当たりの額をとってみても、とても十分なものとは言えない(資料2-1)。文化庁予算額の推移においても平成年間の初期は増額されたが、平成13年以降はほぼ横ばい、平成30年以降は、旅客税財源事業分が増えているが、それを除くとやはり横ばいとなっている(資料2-2)。

 政府からの支出や寄付控除の仕組みが共通してあるものの、例えば米国においては寄付金控除の仕組みが我が国に比べて、対象となる団体も幅広く、その上限も高いなど、非常に充実している点が異なっている(資料3-1)。こうした背景もあって、英米と比べ、我が国の個人寄付の割合は非常に低くなっている(資料3-2)。

これらの資金的なマイナス面にもかかわらず、諸外国の文化GDPと比較すると、平成27年の調査と比べ、令和3年の調査では、他国がGDPに占める割合を減らしているのに対して、我が国は低い数値ながら、わずかに伸ばしており、潜在的な成長の余地があることが推測される(資料4)。

 文化芸術の維持発展の為には、それ自体で稼げることはもちろん、政府の財源とするためにも、文化芸術をコンテンツとして、様々な分野で稼いでいくことが必要である。近時、韓流やK-POP等のコンテンツで、世界的な成功を収めている韓国では、金融面での支援や公正な制作・流通の環境作り、融合コンテンツの育成・支援、さらには韓流拡散と連動した進出まで、政府がコンテンツ政策として、国政の課題として取り組んでいる(資料5-1)。さらには、コンテンツのみならず他産業とも関連して、輸出振興策として、戦略をたて、推進している(資料5-2)。このような、官民一体となった幅広い戦略的な取り組みは、多様な産業で相乗効果が期待出来るものであり、我が国でも取り入れられるべきものであると考える。一方、政府による介入は、表現の自由に対する侵害や、政策の失敗のおそれもあり、それらに配慮した形での支援が望まれる。

②世界のコンテンツ産業の市場部門別の2020年から2025年の年平均成長率を見ると、トップは「アニメ」(29.19%)と日本の得意な分野であるが、わずかな差で2位の「映画」(29.05%)や3位の「音楽」(12.85%)といった分野においては、大きな存在感を発揮しているとは言えない(資料6)。映画については、国際的な賞の中でも日本の作品や受賞者の割合が低く(資料8)こうした分野に更に力を入れることによって、より大きな存在感を発揮できると考える。

 また、コンテンツIP世界ランキングでは、日本が上位10位の内4つを占めているが(少年ジャンプを入れると5)、「キャラクター」の伸びが低く(4.99%)(資料6)、まだまだ伸びる余地があると考えられる。

 このほかにも近時では、国外リョコクの目的としてサブカルチャー(アニメ・漫画)を挙げる人も多くおり(資料9)、旅行関連分野も有望なマーケットとして、力を入れるべきだと考える。

 文化が国境を越えていくことによって、文化芸術基本法前文にうたわれている精神、自由や基本的人権の尊重と言った普遍的価値が、他国に伝わっていくことが考えられる。我が国は自由主義民主主義指標では30位であり、例えば、172位の中国、169位のサウジアラビア、159位のロシアの人々に、我が国の文化を通じて、普遍的価値の理解を深め、親しみを感じて貰うことによって、我が国のソフト・パワーにとって、他国に対して優位に立つという効果が期待できる。

1555字

課題3(選択)

①我が国が難民認定に積極的でないとする批判の要因。

②難民の受入れを増やした場合,どのような問題が発生すると予測されるか。

③難民の受入れを増やさない場合,その代わりに難民問題に貢献する施策にはどのようなものがあるか 。

解答例

①難民条約と難民議定書における難民の定義は「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという充分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいるものであって、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」(資料1)と幅の広い定義となっている。このため、国によって、難民の定義が異なり、それが難民認定数及び認定率で日本が他国に比べ非常に少ない(資料2-1)原因になっていると考えられる。また、日本では「難民」として認定している人数は少ないが、「その他の庇護」として在留を認めている人数は令和5年までの合計で6,054人おり(資料2-2)、これも難民認定数が少ない原因となっている。

 また定義の曖昧さと相まって、運用の厳しさによっても認定数に差が出てくる。日本では平成30年1月に難民認定制度の運用を厳しいものに改めた。その結果、翌年には申請者自体が前年の約半分になっている(資料3-1)。また、その国籍別の難民認定申請者の推移を見ても、平成30年以前は、フィリピン、ベトナムが非常に多かったが、運営が厳格化されてからは、その申請数が激減している(資料3-2)。その変化の原因を運用の変更だけに求めることはできないが、そもそも「難民」で無い人が、「難民」として申請していた可能性が否定できない。よって日本の難民認定数や認定率が低いのは、認定制度の厳格な運用に起因するとも考えられる。

②EU諸国においては、2015、2016年に庇護申請者数が大幅に増え(資料4-1)、それに伴って移民問題が、EUが直面している最も重要な問題として浮上した(資料4-2)。シリアやウクライナなど地中海を通じて多くの移民がやってくる(資料6-1)イタリアや受入人数の多いドイツ(資料6-2)などで顕著に見られるように、「移民が犯罪を増加させる」「自国の労働者の職を奪う」「自国の福祉にとって重荷である」と国民が思うようになった(資料5)。

 我が国でも難民の受け入れを増やした場合にも同様の問題が発生すると予想される。具体的には、移民に対する排斥機運が高まること、社会不安が増大することや、政府に対する不満が高まることが考えられる。またそれらを起因として、欧州や米国で見られるようなポピュリズム政党の伸長の恐れもある。

 移民を統合するための教育費用や行政での対応のために財政負担が増えることも考えられる。

③我が国は紛争が多く発生しているアフリカや中東から離れているという地理的な制約があり、多くの移民を受け入れるのが難しい面がある。しかし、我が国のUNHCRに対する拠出率は米国の10分の1、ドイツの3分の1程度であり、名目GNIが我が国の10分の1程度のスウェーデンやノルウェーと比べても額ベースで非常に低くなっている。我が国が難民の受け入れを現状レベルから大きく増やさないとする場合には、UNHCRなどの国際機関への拠出金を増やすという方法がある。また国際機関以外にもNPOへの援助や、難民の出身国への制裁や援助、制度・技術支援なども考えられる。

1331字

政策担当秘書資格試験 令和5年度問題解説&解答例(1)

お待たせしました。令和5年度の政策担当秘書資格試験の解答例と解説ができました。今年はドドーンとすべて無料で公開してしまいます。今年度より前の10年間分はすべて、受かる!政策担当秘書試験受かる!政策担当秘書試験2 に載ってますので、気になる方は是非読んでみてください。

長いので、まず解説からです。

令和5年度問題解説
全体講評
今年も難しかったですね。良く皆さん合格されたと思います。
 しかし、今年の難しさは近年のものと少し違います。今年は、近年あった「資料にない知識を使ってアイディアを出す」という部分は少なくて良さそうでした。その代わり、資料を読み込む作業に時間を取られる問題が多いです。「このグラフが何を言わんとしているのか」を理解するまでに時間が取られ、「全体の中でどう使うか」も悩みます。時間との闘いです。問題自体は難しくありません。
 課題1はゼロカーボン政策の必要性と金融の役割、課題2は社会保障と財源問題、課題3は少子化・若者対策。すべて当たり前と言えば当たり前、予想のド真ん中の問題です。
 求められる解答も当たり前のことばかりです。しかし、「当たり前のことを当たり前に書く」のは意外と難しいんです。どこまで省略できるのかも悩みます。というか、基本的には全然分かってない人に説明するみたいに、「易しく」「すべて」書く必要があります。それが結構出来ないのです。ただこれは「練習」で出来るようになります。難しいことは必要ありません。
課題2だけは、さすがに「出題の趣旨」の中で「本問については採点対象となった答案が少なく」(!)と書いてありましたが(相当少なかったんですね)、これは問題作成のミスとしか言い様がないですね。「解答のためには社会保障制度や財源の性質など系統的な知識が必要であり、やや難しい問題であったかもしれない。」ですって。難しい問題ですよ!いい加減にしてください。税と保険料の違いを意識している人なんてどれくらいいますか?私でも、えーとどうだっけ?と思いながら解きました。知っていれば難しい問題ではないです。
課題3は少子化対策。女性の社会進出が進んだ国ほど出生率が高いというデータがありますが、深く突っ込めば「ホンマかいな?」という突っ込みもできるところです(どういうメカニズムでそうなっているのでしょう)。が、深く突っ込まずにあっさり書きました。単に女性進出をすすめるだけでは、女性が苦しくなるばかりで少子化は解決しないですよね。また、ハンガリーの例というのも、議論を呼ぶ資料です(解説参照)。
いずれにせよ、選択式の合格者が135名中35名ですので、なんとか選択式試験を通過して(選択式試験で基準点に達しないと、論文式試験の答案さえみてもらえません)、その中で書き負けないように頑張ってください。
合格者の方には行政書士の資格を持たれていた方が複数名いらっしゃって、政策の知識というより、全般的な勘所や作業能力が効くのかなという印象も受けました。

課題1
温暖化の問題です。温暖化の問題に金融業界がどのように関与するか、を書きます。お金の面から締め上げる、と一言で言えばそれだけですが、書くのはかなり面倒です。練習してください。②のところでロシアのウクライナ侵攻によるヨーロッパのエネルギー政策の変更というのが挟まれていますが、すべて易しい問題でしょう。資料(と英略語)が多いので、グラフを読み取るのに時間が取られると思います。これじゃ、資料解釈のテストみたいですが、必修の課題1は今後もこんな感じでしょう。

課題2
 全体でも書きましたが、一見簡単っぽいですが知らないと②が書けない問題です。このような知識を問う問題は良くないです。
解答例では、勉強の為に「保険原理」と「扶養原理」という言葉をつかって書いていますが、もちろん知らなくていいです。私もこの問題を解くまで詳しく知りませんでした。
 たまに、一般有権者の方で、「保険料も(累進課税みたいに)金持ちから多く取れ!」ということを言われる方がいますが、保険と課税はちょっと違います。金持ちでも病気になる確率は基本的には同じです。だからおなじ掛け目(確率)で保険料を徴収します。リスクの分散の為です。負の宝くじというか。所得格差の再分配機能は、所得税の累進課税とかに任せるべきで、本来は保険にそういう役割を負わすべきではないです。が、両方が混ざってなんとなくグダグタになっているのが現在の日本の社会保障で、グダグダになっているのが当たり前として生きている私たちに、今更原理を説明しろ!と言われても頭の中に「?(クエスチョンマーク)」が飛ぶだけです。
 「こども保険」なんてアイディアもありましたが、あれがまた世間の誤解に拍車をかけていると思います。子どもを持つことは「リスク」なのでしょうか?本来、結婚する・しない、子どもを持つ・持たないは個人の自由です。ですから本当は全額「自己負担」でまかなうべきです。が、しかし社会構造も雇用慣行もなかなか変わっていかず、子育ては大変なので、少子化がどんどん進行する。そこで、「公費」で負担する、子どもを社会全体で育てるという子育ての「社会化」が進行します(世界的にも)。本来は、雇用保険料に上乗せして子育ての財源に充てるという現在の政策は(批判が沢山あるように)筋違いなわけです。子育て世帯に給付するのに、子育て世帯の雇用保険料を上げてどうするんじゃい!とか、子どもを持っていない現役の勤労世帯から、子どものいる世帯への所得移転になってしまう、と批判されていますよね。元明石市長の泉房穂さんが友人の官僚に聞いた話として、「厚労省が財源を財務省に要求しても首を縦に振らないので、厚労省が管轄できる保険料の負担を増やしている」という話がありましたが、あながち間違っていないのかも。本来なら税でまかなう性質のものを取りやすい保険料で取ろうとしているからおかしくなるのです。お互いが連携しないうちにドンドン両方が上がっていくというのは望ましい姿ではありませんね・・・。
 社会保障と財源については、国立国会図書館のこのレポートもご参考に。
社会保険による財源調達

課題3
 少子化の問題かと思って解いていたのですが、どちらかというと若者政策一般について書かせたかったようです。①については完全に少子化ですが、②のハンガリーの例というのが、何を言わんとしているのかよく分かりませんでした。ハンガリーも一時、合計特殊出生率が回復しましたが直近は落ちていますし、あまりになりふり構わずやった政策が公平という観点からもどうなんだろう?と最近では疑問符を付けられています。「独身罰」だと批判しているものもありました。
特に資料8「ハンガリーの人口と平均年齢の推移」と資料9「ハンガリーからハンガリー国外への移住者数と移住先」の資料の使い道が分かりにくいです。ハンガリーは若年層が海外へ流出して、毎年人口が3~4万人減少し、平均年齢が段々上がり、人口減少が心配されているようです。それを希望のない国・日本から海外への人材流出と絡めて書かせる、というのが意図だったようですが(出題の趣旨で「インドやASEAN諸国地域の経済成長後に生じえる日本からの人口流出に対する方策」を評価しています)、背景が分かるにはちょっと資料不足だと思います。元ネタはこのJETROの記事で間違いないでしょう。表も同じですし。
「好景気の他の欧州諸国で高賃金を得たい」というのが、若者の国外脱出の元々の第一位の理由だったらしいです。これは、最近の日本でよく言われる「海外で稼いだ方が豊かな生活ができるや」と、寿司職人や理髪師さんなんかが海外に行っているという日本の現状にあてはまりそうです。いや、待てよ、アレは円安が直接の原因だから無理があるか。無理矢理感がありますね。賃金が上がらない日本の若者の脱出という点で、ハンガリーとの共通点を考えさせるという意図なのでしょう。しかし、直近はハンガリーでは急激に賃金上昇があったようで、不満の一位は「政治への不満」となっています。そうするとまた話が違ってくるような・・・。
ここあたりの評価を読むと、独自アイディアを評価する傾向はまだ変わっていないようですので、色んなアイディアを書いてみましょう。

ちなみに、ハンガリーの平均年齢は資料によると42.5ぐらいですが、日本は48.6歳(World Population Reviewによる2020年の数字)。
1位   モナコ       55.4歳
2位   日本        48.6歳
3日   ドイツ       47.8歳
4位   サンピエール島・ミクロン島  46.5歳
5位   イタリア      44.5歳
6位   ギリシャ      44.5歳
7位   スロベニア     44.5歳

しかし、直近の報道によると、日本の平均年齢はとうとう50歳になったとのことです。日本は高齢国なんですね・・・。

令和5年度 政策担当秘書資格試験 解説(資料編)

 令和5年度の政策担当秘書資格試験の課題の公表がありました。https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/hisho/pdf/r05shushi.pdf
現在、解答例と解説を鋭意作成中です。そして、気になるのが毎回の著作権関係による資料の抜けですが・・・。
 今年度、課題1から2は抜け資料がなく「良かった良かった」と思っていたのですが、ありました。課題3「少子化対策」。こんなに問題無く使えそうな資料がいっぱいありそうな分野でこんなに資料が抜けているとは・・・。
 と、嘆いてばかりもいられないので、元資料を探してみます。
「資料1 各国の合計特殊出生率の推移」は、内閣府の資料ももちろんあるのですが、(何故か)富山県の資料が見やすくてお勧め 。https://www.pref.toyama.jp/sections/1015/ecm/back/2014dec/tokushu/1_3_04.html
「資料2 年収別に見た日本の40代男性の子どもの数」は間違いなく東京大学の研究のコレでしょう。https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400187301.pdf よく引用されているので、もう少し見やすくしたグラフもありますが、おそらくこのまま出されたのではないでしょうか。
「資料3 各国の女性の就業率と合計特殊出生率の相関」は、就業率ではなく労働力率と言う言葉を使っているのと、年次が古いので違っているかもしれませんが、信頼性とよく使われているのを加味して、コレを推します。https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/syosika/houkoku/pdf/honbun1.pdf
4ページの図です。
「資料6 ハンガリーの主な家族支援策」はこの記事が元ネタではないかと思いますが、どうでしょうか。https://apinitiative.org/2023/09/11/50901/ 表は著者の方が作成されたものがよくまとまっているので、スペースを考えるとコレではないかと思います。
 「資料7 ハンガリーの合計特殊出生率の推移」は毎日新聞の記事がきれいなものを作って載せていますが、有料記事になっているので記事からは見れません。検索すると図だけがでます。https://mainichi.jp/articles/20220127/k00/00m/030/234000c 要は2011年に1.23だったものが2018年に1.55まで回復したというものです(2019年には1.49に落ちている)。

では、もうしばらくしたら令和5年度問題の解答例と解説を公開しますので、お楽しみに!

令和5年度政策担当秘書資格試験 合格者オリエンテーション

昨日(9/27)令和5年度の合格者の方のオリエンテーションがありました。今年の合格者は14名。様々な経歴と思いをお持ちの方が来られてるなという感想でした。

今年も政策担当秘書出身の大西健介衆議院議員と梅谷守衆議院議員が来賓で挨拶されました。政策担当秘書試験の合格者は、他に林芳正前外務大臣、宮下一郎農水大臣もいらっしゃいます。受験者数が最近は横ばいですが、素晴らしい制度だと思いますので、是非多くの方に受験していただきたいです。

今年の試験の概要も出ましたので掲載しておきました。しかし、選択式試験で135人から34人に絞るのは、絞りすぎの気がします・・・。選択式試験対策は「受かる!政策担当秘書試験」の1冊目の方で解説していますので、ご興味のある方は参考にしてみてください。

今年度の試験問題の解説と解答例も、発表されましたら、できるだけ早く解いて掲載したいと思います。

「受かる!政策担当秘書試験2」

お待たせいたしました。好評をいただいた「受かる!政策担当秘書試験」の続編「受かる!政策担当秘書試験2」を発売させていただきます。試験1週間前になってすみません!過去9年分の解説と解答例、抜けている資料が入ってます。前作とこれで試験対策はバッチリ(のはず)。前作と合わせてこれで過去10年分の問題と資料、解説、解答例が揃いました。

政策担当秘書試験 令和4年度問題解説

 今年は結構難しかったです。というと身も蓋もありませんが、その理由は傾向が変わってきた為です。最初に謝りますが、数年前の問題は資料に沿って書けば知識が無くても合格できるようなものが多く、私も『受かる!政策担当秘書試験』の中で「資料が指し示す誘導に乗って書いてください」と言っていました。しかし一昨年ぐらいから「アイディアを求められている」ようになってきました。これはすでに何度か書いていたのですが、さらに今年は進化しています。
 今年は「資料を解釈した上で、資料にない知識を使ってアイディアを出す」という点で難しくなっています。特に課題2は資料も指摘するポイントも多く、読み込む資料も多く大変です。これを2時間で2問を書き切るのは厳しいでしょう。
 ただ、全部書けなくても大丈夫だと思います。選択式の合格者が142名中37名とのことですので、なんとか選択式試験を通過して(選択式試験で基準点に達しないと論文式試験の答案さえみてもらえません)、その中で書き負けないように頑張ればなんとか合格できるのではないでしょうか。誰にとっても難しいはずです。論文式はこの解説を読まれている方なら大丈夫(のはず)!

課題1
 企業のデュー・ディリジェンスの問題です。アパレル業界などが、発展途上国で過酷な条件で労働者を働かせているというニュースを見た方は多いでしょう。それに対して是正を求めていく風潮になっていますが、国(政府)から国民へは議会があるので一応自分たちの代表が法律を作り、それによって国民(自分)に罰を与えることは可能です。しかし、企業間の取引は私人と私人の取引なので、私的自治の原則が働くので国家の強制力が弱い。個人同士が契約したなら結構なんでもやっていい、極端に言うなら合意されていれば殴ってもいいのです(但し、公序良俗という限度はあります)。というわけで、私企業間の取引に政府という公権力がとやかく言うのは難しいという前提があります。
 その上で、国連と国家の関係も、国家に主権があるので、国連が国に罰を与えたり規制を加えたりするのは、国が国民にするのと違って難しいです。しかし、加盟国で決めたことですから弱めの強制力はあるということです。それが①
 ②は資料2,3,4を使って書く。当然、問題になっているぐらいですから日本企業は遅れているということを書く。そして、ポイントは、日本企業は目の届く国内の取引先については意識しても、海外の取引先のことは意識していないでしょう?ということだとまず思いましたが、「全体講評」を見ると「海外サプライズチェーンにおける人権尊重の不十分さを問題視する答案が少なかった」と書いてあり逆にびっくりしました。これがこの課題のポイントだと思うのですが・・・。
 ③は資料5、7-1、7-2でしょう。日本が問題視されているアジア地域との取引が多いこと、投資上不利になることを書けばいいでしょう。ESG投資とかPRI署名とか意味が分からなくても、なんとなくそんなものが流行なんだな、と思って書けばいいと思います。全体講評ではここが書けていなかったと書かれていますが、ここも逆にびっくりです。
 ④はちょっと悩みます。海外の事例(資料6)を見て、どう考えればいいのか。罰則のあるなし、対象の範囲などを参考にした上で論じる。参考になる資料はこれだけなので、後は自由に考えて書くということらしいです。
ガイドラインの策定、専門家の養成、立法化、国際条約、大(多国籍)企業と中小企業の区別等は、ちょっと知識がないと苦しいかも。課題2,3の方が知識を必要とされる「悪問」だと思いますが、これも少し知識か思いつきが必要な問題です。
 ①~④まで小問があるのも負担の大きい問題でした。

課題2
 受験された方が「全然分からない。パス」と言われていた問題。とはいえ、IR(統合型リゾート)=カジノの是非の問題と分かると案外簡単です。それにしても①で憲法論が必要で、風営法の改正(2016)に触れさせた上で、気候変動の問題も絡めて日本のナイトタイムエコノミー、つまり夜間の消費・娯楽産業の強みと弱みを表現するという盛りだくさんな問題です。資料4、5、6を読み込むだけでも時間がかかるので、短時間での作業能力も必要とされます。
 資料2は資料1との関係から、上記の憲法3論点に関係ありそうなものを探しましたが、自信がありません。資料3についても「気候変動と観光業」に関する記事がなかなか見当たたず、確信がありませんが、前後のつながりからこういう資料だと推測しました。このような資料の抜けた問題は勉強するのに不適格なので、本当にやめて欲しいと思います。
 資料1は大抵大切なことが書いてあるので無視できないのですが、21条(集会の自由)でダンスする人達の自由、22条で(ダンス)クラブの職業の自由があって、31条で罪刑法定主義(法律に定めないと罰を科せられない)がでてきます。これを資料2と照らし合わせて読み込むのですが、風営法改正で問題になったクラブ営業(踊る方ね)、クラブ「NOON」裁判とか頭の片隅にないと何を聞いているのか分かりにくいでしょう。私も、今回調べて初めて風営法によってクラブ営業がしにくかったこと、改正の裏側には風営法を改正しないとカジノ営業できないという理由があったことを知りました。
 薄暗いところでお酒を出すと風俗営業とみなされて、面積や届け出の厳しい規制がありました。昔はダンスホールが売春の場になっていたという歴史があるようですが、今や時代遅れの規制ですね。カジノを営業するのに酒も出さないといけないし、薄暗くしないといけないし、深夜営業しないといけない、ということで風営法を変える必要があったようです。これは背景の知識で、問題を解くのには関係ありませんが、繋がると「あぁこういう問題なのか」と分かります。
 ②でナイトタイムエコノミーの活性化に資するものと具体例を出します。これが、全く資料と別に考えるのか、資料から抜き出して現在の成功例を指摘するのかが分かりにくい問題文です。私は最初、アイディアを問われているのかと思って「イルミネーションを見る観光バス」みたいな解答を書いていました。「全体講評」を見ると「食の多様性」を書けばいいようで「なーんだ」と拍子抜けです。日本は何料理を食べても世界トップレベルの店が集まっていということを基に書けばいいのか、と思います。「全体講評」では「いずれの答案もよくできていた」ということです。
 ③が一番聞きたかった「カジノの是非」。資料7と8しかヒントがありません。「全体講評」を読むと「資料8のシンガポールの資料を読み解けるか否かで答案の分析力に差が出た」とありますが、これだけの資料からどう読むのでしょうか?カジノ開設以来、国民のギャンブル参加率が下がったぐらいしか思いつきませんでした。

課題3
 例年どおり、一番文系っぽいというか生活実感のある問題で、課題3を選んだ方は多かったのではないでしょうか。
 ①で高齢者の就業を難しくしている経済的・社会的要因を挙げて、②で解決策をだす、という問題です。書きやすいのですが、意外と資料が少ないので自分の知識で書かねばなりません。「全体講評」にも「それ(資料)を基に、更に本問に係わる自らの知識等を用いて考察や施策の提言を行う答案が乏しかった」と書かれていますが、すみません、冒頭に書きましたが、数年前までの問題と異なり、この問題は「知識」が必要になってきます。「知識」が必要な問題だと、仕事で関係があったりして特定の分野に得意な人に有利になってしまうので良くないと思うのですが。だから、だれでも書けるような「高齢者の就労」という問題にしているのだと思いますが、試験問題としていかがなものでしょうか。
 「全体講評」に「高齢者の就業を難しくしている要因」について解答を求めているのであって「背景」ではない、と書かれていました。よもや間違いないと思いますが、問われていることは正確に答えてくださいね。つい自分の知っていることに飛びついて、書きがちです。それと、わざわざ「経済的・社会的要因」と書いているので、抜けないように二つの要因について書いてください。
 ②の「全体講評」で挙げているリスキリングなどは分かるのですが、「労働と介護・医療の両立支援」のイメージがわきません。さらにシルバー人材センターについても「その是非や普遍的な活用性に言及し、それを踏まえた施策を説明する者は少なかった」とありますが、無理でしょ!(去年に引き続き2回目の「無理でしょ!」)
 最後に「繰り返しになるが」とことわっていますが、「資料を基にして自分の考えを展開する」ように言っています。前にも書きましたが、急に思いつける人以外は、出そうな世の中の課題については普段から考えておく、試験前にはいくつか考えてみるということが必要かもしれません。

受験を考えられている方は、とりあえずこれを読んでください!

政策担当秘書試験 令和4年度問題

昨日のツィートで今年の問題が来年の3月にならないと公表されないと書いたのですが、今年は何故かもう発表されていました!すみません。近々、解答を作成し開設を掲載します。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/hisho/r2shushi.html

政策担当秘書試験 令和4年度問題(論文式)再現

 今年6月行われました政策担当秘書試験(一次試験)の問題が受験者様のご厚意により情報を頂きましたので共有させていただきます。毎年、翌年の3月ぐらいにならないと問題が発表されず、記憶に頼っての復元ですので、正確性に欠けるところはありますが、正式な発表を待っていると対策するにはちょっと遅いので。

課題1 人権デューディリジェンスについて
①日本企業の人権意識の評価
②企業に人権尊重した動きを取らせる施策を提案

資料:人権デューディリジェンスに関する国際宣言文書?のような定義がわかるもの
   (国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011年)か?)
    各業界ごとの、世界大手企業の人権意識評価ランキング
   

課題2 不明。例年どおり、課題3よりとっつきにくかった模様。

課題3 高齢者の就労のミスマッチ問題。
①現在の企業と高齢者の就労のアンマッチについての分析
②企業の高齢者雇用意欲と高齢者の勤労意欲のアンマッチを解消する施策を提言

資料:過去の定年と健康寿命や寿命が変わっているグラフ
   40代~70代の就労希望者割合と希望理由の表
   高齢者雇用に対してどのような問題を抱えているかのアンケート結果
   高齢者就労斡旋センターの高齢者と企業とのマッチングのやり取りがわかる図